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第7話 帝登場

last update Date de publication: 2026-06-18 06:00:17

 それどころか、前世の一条グループじゃ逆立ちしても手が届かなかった財界のドン・武藤会長に自分からすり寄って、なんかクソ難しそうな半導体の話をして、あっという間に気に入られてやがる。

 俺にわからねえ話で盛り上がるなんて……生意気だ!

「おい、ふざけんなよ……! なんであいつ、俺をあんなゴミを見るような目で見たんだよ……っ!?」

 計算が合わない。最初の第一歩から、俺の完璧な人生設計が狂っている。 結月が俺の言う通りに動いて、俺を輝かせるための奴隷になってくれないと、俺の素晴らしい計画がスタートしないじゃないか!

 あいつ、マジで俺のこと置き去りにして、そのまま武藤会長と奥の談話スペースに行きやがった。

 おいおいおい、嘘だろ!?

 こんな展開は前世ではなかった!

 俺の最強の経営計画はどうなるんだよ!

 あいつが徹夜で書類直してくれないと、明日銀行に持って行けないじゃん!

 確か俺が武藤に気に入られて、経営計画もってこいっていうから、結月に泣きついてなんとかしてもらったのに、このままだと話が違ってくる。なんとかしないと!

「チッ、おい、そこを退け!」

 周囲の連中の「何だあの泥臭い男は」というヒソヒソ声を無視して、俺は結月を追いかけた。

 あ。そうか。俺の気を引きたくてやったんだな。あのまま武藤と仲良くなって、俺に紹介してくれるつもりなんだろ。そうかそうか。そういうことか!

 おい結月、ちょっとツンツンすれば俺が焦るとでも思ったか?

 仕方のない女だなあ。

 前世みたいに、俺が「君がいなきゃダメだ」って優しく囁いて、ハグ一発してやるしかなさそうだ。

 処女だったから、あっちの具合も俺好みに調教できて、最初はよかったんだけど、どんどんうるさくなっていったから、成美が戻ってきてからは彼女に夢中になったんだっけ。それでも甲斐甲斐しく俺の気を引こうとしていたから、適度に飴と鞭作戦でいくしかない。

 モテる男も辛いぜ。

 俺はネクタイを締め直し、ちょっとデキない男を演出して商談スペースの方へずかずか入っていった。

「なんですかあなたは! ここはVIPエリアですよ!」

 ガードマンの制止なんか知るか。

 俺の明るい未来(業界1位)がかかってんだ。早く俺の奴隷に融資の段取りをさせなきゃ未来がおかしくなるだろ。

 俺は夢中になっている結月の傍に行って、彼女の腕を掴もうと手を伸ばした。

 ガシッ

 しかし、それより早く俺の腕をものすごい力で掴む男がいた。

 チッ、誰だよ邪魔すんな!!

「彼女になにか?」

 男の顔を見た。

 仕立てのいい漆黒のスーツを完璧に着こなし、彫刻みたいに狂気的なまでに端正な容姿。だけどその目は、触れたら一瞬で殺される猛獣みたいな光を放っている。

(な、んで……なんでこんな怪物がここにいるんだよ……っ!?)

 俺は一瞬で理解した。 前世の一条グループが、どんなに逆立ちしても、どれだけ金を積んでも、絶対に勝てなかった政財界の絶対的支配者。 若き捕食者――諸星帝(もろぼしみかど)だ。

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